Deep Desire

【第11章】途切れた糸の先

<Vol.2 人形>

“その本に書いてあることはおとぎ話ではないよ、ラグレクト”
 ――『魔道』一族の中で誰よりも敬愛していた叔父の言葉は、古びた書物に描かれた絵図を伴ってラグレクトの脳裏に去来した。そのときから、彼は心の中で身構えていたのである。自分の予想が的中し、薄っぺらい世界の住人が現実で確固とした形を築いても、冷静に受け止められるよう覚悟を持って臨んでいたのだ。
 しかし、「現実」とはラグレクトが思っていた以上に強《したた》かであった。彼の秘めていた覚悟など風前の塵《ちり》のごとく吹き飛ばし、そればかりか思考力さえも無力化させてしまった。先ほどまで考えていたことなど何もかも忘れ去り、漆黒の頭の中を純白に染め上げられた青年は唯一、思い浮かべた言葉――人の名前を小さく呟く。
「……ハルカ……」
 入室した直後に襲い掛かってきた強烈な光、それが失せていくのと同時に視界に浮かび上がってきたものは整然と並ぶ幾つもの管《くだ》。鈍く光るこの円柱の管《くだ》はどれも液体で満たされ、中には長い金の髪を泳ぐように揺らした“少女”たちがいる。
 “彼女”たちは一様に目を閉じているが、その瞼の下に隠された瞳の色はともかく、顔の造形だけで言うならば全員が――たった1人の例外すらなく――ラグレクトの知っている女性・ハルカ以外の何者でもない。
“おとぎ話ではないよ、ラグレクト”
 不意に、叔父の声が蘇る。
 己が見たものを否定せずに受け入れよ、と言いたげに。
 そこへ、思い出から発せられる助言を後押しするかのごとく、ルキスの落ち着いた声音も意識へ割り込んできた。
「これがスペア……なるほど、どれもこれもまったく同一の“もの”だな」
 詩吟を口ずさめば万人を虜にできると思《おぼ》しき玲瓏な声は、嘲笑を孕んで静寂に包まれた部屋に浸透していく。金の将軍にしては珍しい、あからさまな蔑視的態度に牽引され、ようやくラグレクトの呪縛は解き放たれた。
 彼はゆっくりと、視線を“眠り姫”たちから彼へと移行させた。
「……スペア……」
 はっきりと、意思を持って声に出したはずだった。が、本人の意思を無視して、言葉は文字を指でなぞるかのように機械的な音の羅列として力なく響く。
 見知らぬ言葉だからだろうか? 正体不明の不安がじわりと心に染み入ってきた。
 ルキスはそんなラグレクトの心中になど構いもせず、いつものように一拍の間を置いて緩慢ともいえる口ぶりで彼に話しかけた。
「スペアとは人形という意味だよ、ラグレクト・ゼクティ。代役《ダミー》と言い換えてもいい」
 人形《スペア》。代役《ダミー》。
 親切にもルキスが教えてくれたことによって、ラグレクトの中で“彼女”たちの正体は確定的になった。逃げ場を失ったときの感覚に類似したものが全身に行き渡る――。
(ハルカが……代役《ダミー》……)
 ラグレクトは、思いもかけない方向から横っ面を叩《はた》かれたような心境になった。
 衝撃は、ことの他、大きい。
 無論、その衝撃というのはラグレクトにのみ与えられたものであった。絶句した彼の背後からは、何もわからぬと言いたげな、戸惑いを最大限に表したジェフェライト・ジャスティの声が上がる。
「人形《スペア》? 代役《ダミー》? ……それは一体何ですか?」
 誰に対して投げた質問なのか、その点は瞭然としなかった。それゆえ、ラグレクトはまずルキスを一瞥する。
 かの将軍は唇を引き結んだままだった。蒼い目は、どこか楽しそうにラグレクトの様子をうかがっている。
 試しているのだろう。ラグレクトが代役《ダミー》に関する知識をどの程度、記憶の棚に溜め込んでいるのか、を。
 何事においても相手より先に手の内を明かすのは得策とは言いがたいが、このまま自分が黙りつづければ痺れを切らすのはルキスではなくジェフェライトの方だ。
 仕方ない、とばかりに彼はジェフェライトへと向き直った。
「代役《ダミー》は“取って代わりうる者”という意味を持った大陸古語だ。ルキスによれば人形《スペア》とも言うらしい」
「大陸古語……」
「実物《オリジナル》に似せて創られたものであり……」
「ちょっと待ってください、ラグレクト。実物《オリジナル》とは?」
「順を追って説明する。いいか、『魔道』の古書によれば……」
「古書? 大陸古語? 何のことですか? そこから説明してください」
 説明を遮るようにジェフェライトが尋ねる。
 ラグレクトは目を丸くした。そして、まじまじと『剣技』の王子を注視する。
 そのようなことを訊かれるなど、彼は想像すらしていなかったのだ。
 確かに、大陸古語は俗に“喪失言語”と呼ばれるような、見聞きする機会のない言語である。
 ラリフでは帝国《ラリフ》語が主流だが、港湾都市レーレなど他国の者と接しやすい環境においては大陸公用語が一般的に用いられている。この大陸公用語はラリフ帝国が建国されるよりも昔に言語における大陸統一をなさしめたものであり、それによって一掃された言語たちは総称して「大陸古語」もしくは「古語」と言われていた。
 人々の歴史は編纂される書物によって、あるいは連綿と紡がれる血を頼りに口伝で後世に残されるものだ。大陸古語における歴史書も無論、この世には存在している。だが、その数は決して多くはなく、また、同等の内容を記された大陸公用語の書物と比べて重要度が乏しいものばかりであった。そのため、どの国であっても大陸古語の本を手に取るのは「研究者の中でも変わり者かよっぽどの暇人」と相場は決まっていた。……解読しづらい言葉で綴られた、取り立てて語るべき内容のないものと好んで相対するのはそういった人種であるのが常だ。
 ただし、ラリフ国内における3族は、研究者でもなければ暇人でもないにも関わらず、大陸古語によって編まれた書物に目を通していた。それが古くからの“聖女”の命だからである。
 ジェフェライトは『剣技』の第1王子――つまりは将来的に『剣技』を背負《し ょ》って立つ身。『魔道』の第1王子、ラグレクトがそうであったように、ジェフェライトも大陸古語についてはある程度、目を通していなければならないはずだ。それなのに、彼はまったく知らない様子で「何のことですか?」と尋ねてきた……これを驚かずにはいられようか。
 どうなっているんだ、と逆に聞き返したい心境でラグレクトはジェフェライトを見つめていたが、謎が深まるよりも早くに黙っていたルキスが口を挟む。
「『剣技』では、大陸古語に触れるのは麗しの王女殿だけと決めていたのだろうね……王族すべてが知らねばならぬ、読めねばならぬというものでもないと族長殿は判断されたに違いない」
「大陸古語に触れる……?」
「族長殿は第1王子である君には剣のみを相手とさせたかったということだ。……この国に古書と呼ばれる類の本がある、それは聞いたことがあるかな?」
 話を戻すように、ルキスは『剣技』の話題を一方的に切って「古書」という言葉を会話に登場させた。嫌味には聞こえない、生徒に優しくものを教える教師のような口調でもって。
「……いいえ」
 憎むべき仇敵ではあるものの、根が素直なジェフェライトは問われたことに対して謙虚に答えてみせる。
 そうか、と1つ頷いたルキスは長い睫毛を震わせるようにゆっくりと2回、瞬きをする。どこから話し始めようか考え耽っているようにラグレクトには見えたが、相手は簡単に胸の内を悟らせない男である、言動に込められた意味を想像させる十分な暇も与えずにルキスは再び口を開いた。
「古書とは、先ほどから何度か出てきている「大陸古語」によって書かれた物のことだ。この大陸古語とは、昔、まだ大陸公用語が広がる前に存在していた言語のすべてを指し示す。よって、一口に大陸古語とは言ってもその数は山ほどある。だが、おかしなことに大陸古語を用いて編まれた古書の絶対数は少ない。ラリフにおいてもそれは例外ではない」
 耳に心地良い低音が、ここで一旦途切れた。ジェフェライトが話についてきているかを確認するかのように。
 ラグレクトも気になってジェフェライトを顧みた。2人の眼差しの先で、『剣技』の王子はゆっくりと首肯する。
「一説には、古書はその多くが人道的に悖《もと》るものであったがために灰と帰した、などと言われている。それが正しいか否かはさておき、実際にラリフ国内にある古書は、政治的に問題があるとみなされたものは最高神官が然るべき処置を講じ、それ以外のものについては聖都、3族宙城、神殿都市フライにおいて厳重に保管することとなっている」
「……『剣技』にもあるということですか」
「ないわけがない。ただ、他の場所にある古書とは異なった言語体系のものが集められている」
 ついこの間、この目で確認してきた。
 悪びれもせずに付け加えてから、ルキスはさらに淡々と語る。
「聖都将軍、3族、最高神官には、“聖女”より、自分たちのところにある古書を解読することが厳命として下されている。『剣技』においても誰かしらが古書に接しているはずだ。聖都では私がその任を得て古書を多く漁ったが、その中に人形《スペア》について書かれた箇所があった。――古書曰く、『人の手を介して創造・維持される、英知の結晶。人を神となさしめる人』……それが人形《スペア》」
 話の途中ではあったが、ラグレクトは「『魔道』に現存する古書では代役《ダミー》と記されている」と補足した。
「人形《スペア》、代役《ダミー》、どちらも表しているものは同じだ。人が生み出した、人間《ほんもの》と比べて何ら遜色しない“もの”のこと。――書に拠れば、かつて、この大陸には研究所《ラボラトリー》と呼ばれる施設があった。そこでは、『人を神となさしめる』ためのあらゆることが行なわれていた。そのうちの1つが、人の再生だ」
「再生……」
「と言っても、死者の蘇生ではない。……いや、それも試したようだが、上手く行かなかったとどこかで読んだな。私が言った「再生」とは、1人の人間を複数生み出すことだ。……想像しづらないならば植物の種を思い浮かべればいい。今、育てようとしている花がある。その種を複数の土壌にて芽吹かせる。そこで回収し、同一の環境を与え、足並みを揃えて成長させる。それまでに数回の試験《テスト》を行い、予測と違った結果《パターン》を生み出したものについては、葉、茎、根、それぞれの部分に分解して研究・分析の対象とする。そうして、最初に目をつけた種から咲いた花の複製に近づける」
「……なぜ、違う形の花ではいけないのですか? 人が“人”を創るなど許されることではないと、誰も思わなかったのでしょうか?」
 もっともらしい質問をジェフェライトが口にした。
 それはかつて、『魔道』の第1王子が抱いた、けれども口に出さずにいた疑問そのものでもあった。そのため、無表情を装いながらも、ラグレクトもルキスの回答に耳を澄まさずにはおれなかった。
 ルキスは陶器のように白さが目立つ指先で前髪をそっと退け、続けた言葉でもって彼らの過度な期待を払った。
「さて、それは古人に聞いてみなければわからぬところだ。私がそんなことを考えだしたわけではないのだから。……ただ……」
 そっけなく言ったかと思うと、ルキスはジェフェライトとラグレクトをじいっと見つめる。
 口端には十二分に含みのある笑みを貼り付けて。
「私にはわからないが、環境を整え、そこで種を育て、何度も同じ色の花を咲かせようと躍起になっている3族ならばその答えを知っているのではないかな?」
 にわかに沈黙が降りた。それを壊すように、くつくつとルキスの忍び笑いが響く。
 ラグレクトはジェフェライトを見やる。途端に目があった。
 『剣技』の王子は顔を強《こわ》ばらせている。光の加減などではなく、真実、顔は青ざめていた。その茶色い双眸は救いを求めるようにラグレクトを見つめてきているが、きっとラグレクトも同じような表情をしているのであろう、彼は何も言ってこなかった。
「……教えてもらいたいな、『剣技』のジェフェライト、『魔道』のラグレクト。“取って代わりうる者”である彼女たちと、お前たちは何が違う? 背や腕に括り付けられた糸の太さか? それとも呼び名か?」
 叫ぶように問いかけ、数ある管《くだ》のうちの1つに歩み寄ったルキスは腰の剣を抜いた。
 剣が空を切る音と共に管《くだ》に襲いかかる。しかし、派手な音を立てただけで“少女”を守る円柱はびくともしなかった。何も起こらないことを見届けて、ルキスはさらに高らかに笑った。
「強固な殻に守られ、どんなの夢を見ているのだ、金髪の姫君よ。どれほどに芳しい夢に溺れようとも、お前は人形《スペア》。舞台に立てば踊るだけだ。世界に耐えず曲を流させるために、お前はただ踊り続けるだけなのだ。だが……私はお前など要らない。お前を欲している世界など私は要らない。お前たちの定説《ルール》に組み敷かれた世界など、私は必要としていない!」
 再び、剣が音を発して円柱を食らおうとする。
 ルキスが何を主張しているのか、2人の王子には理解できなかった。わかったことといえば、彼が狂ったように激しい感情を剥き出しにし、何かを……“世界”を破壊しようとしていることだけだ。
 彼らは圧倒されていた。だから、というわけではないが、目はルキスに釘付けになっていたことが、彼らが新たに現れた男に気づかなかった理由の1つでもあったに違いない。
「……ルキス」
 押し殺した怒声というのはどれほど小さなものであっても耳に届くものだ。
 ハッとしてラグレクトとジェフェライトが声の主を探す。どこから聞こえてきたのかは判じがたかったが、それでも空気を裂くように発せられた殺気の源を探ることで目はすぐに乱入者を見つけ出した。
 豪奢な金の巻き毛を肩から払いのけ、男は両目に怒りを滾《たぎ》らせていた。彼に目で人を殺せる能力があったならば金の将軍は一言も発せずに床に崩れ落ちていただろう、そう思わずにはいられない鋭い視線が部屋に満ちた緊張感をさらに高める。
 だが、空間の雰囲気に触発されて腰の剣に手をかけたジェフェライトや身構えたラグレクトと異なり、睨まれている当の本人は涼しい顔をしている。むしろ、この出来事を楽しんでいるかのような様子を垣間見せた。
「こんなところで会うとは思わなかったな、カオル。すっかり眠りについている時間だと思っていたよ」
「今、何をしていた、ルキス!」
「見ていたのに尋ねるとは、君も存外に人が悪い。私は、君の麗しい人形《スペア》たちに挨拶を交わしていただけさ。今日、明日に知り合うことはないかもしれないが、将来的に……」
「――ふざけるな! 貴様、どうやってここに入った!」
 ルキスの言は烈火のごとき責問によって撥《》ねられた。
 困ったように肩を竦め、美貌の将軍はお辞儀をするような動作でもってラグレクトとジェフェライトを紹介する。
「あちらにいらっしゃるのは、『魔道』と『剣技』の次期後継者殿。……私の鍵石《けんせき》は役に立ちそうもなかったのでね、王子様方にご協力いただいた」
 そこに至って初めて存在に気づいたかのような顔をして、カオルはラグレクトとジェフェライトへ向き直った。
 たっぷりと数秒間、怒気を漲《みなぎ》らせた視線が王子たちの間を行き来し、最後に舌打ちへと結びついた。
「……『魔道』に『剣技』……交友関係が広くて羨ましい限りだ」
「私は地下で息を殺して生きている君とは違うからな」
「そっちの『剣技』は昼にハルカと戦った奴だろう? ルキス、お前がギガの都市長と手を組んでいたなど思いもよらなかった」
「人間の想像力などたかが知れているものさ」
 勘違いを正さずにさらりと言ったルキスは、どうでもいいとばかりに首を振る。ただ頭《かぶり》を振っただけの動作は誰の目にも芝居がかったものに見え、結果的に気の短いカオルに剣を抜かせた。
 抜剣後のカオルは一陣の風のようだった。地を蹴ったかと思えば、ルキスの前まで間合いを詰めていた。
 その早さは対キーファ戦で見せたものの数段上で、剣を扱うジェフェライトに激しい驚愕をもたらす。
 しかしながら、カオルを風と称するならば、対するルキスは水のようであった。
 動じることなく右足を1歩引き、彼はいつ抜き放ったのか、管《くだ》の光を反射させる刀身を緩く傾け、鍔元でカオルの剣を軽ろやかに流した。そのまま、勢いを殺すこともせず、宙に楕円を描くように剣を翻し、左手を添えるとカオルの胴を薙ぎ払いにかかる。一分の隙もなく。
 もちろん、カオルは黙って真っ二つにされるような痴態をさらしはしなかった。身体を捻るように方向転換をし、素早く剣を垂直に立ててルキスの攻撃を防いでみせたのだ。ただ、咄嗟の動きだったのか。彼の体はやや流れてしまい、金髪が1房、花のように乱れ散る。
「くそっ」
 短い罵声をかけ声として、カオルは左肘でルキスの腕を跳ね上げることを試みる。
 それをルキスが避けることなどカオルにはお見通しだった。いや、それこそがカオルの狙っていたものだった。彼はルキスが少しだけ空けた脇へ剣を繰り出した。
 瞬間、全体重を後ろへ持っていくかのようにルキスは後ろへ引く。踊りに似た鮮やかなステップだ。そこに付け込むことをせず、カオルもまた引いた。彼らの戦いは一呼吸入れる状態を作り出した。
「……いい加減に気づいたらどうだ、カオル」
 戦いなどなかったかのような静かな声はルキスのものだった。
 彼は嘆くように、哀れむように、ウィングールの都市長へ語りかける。
「君は、かつて君を愛しんでくれた母親を人形《スペア》に求めている。君の意思とは関係なく、この世で君ただ1人を愛してくれる者を求めているのだ。……だが、冷静に考えてみればわかることではないか。人形は人形。手繰る相手の意図のまま、くるくる踊るに過ぎない。君が手を離さない限り、君の意思に反して踊ることはない。また、君が手を離せば、人形は踊ることなどできない。……君の望みは叶わぬ夢でしかないのだよ」
「叶わぬ夢……」
 傍観者であるラグレクトとジェフェライトなど眼中にないといった様子のカオルは、金の将軍の断言を認めず、拒まず、歪んだ笑みだけを返す。
「そういう貴様はどうなんだ、ルキス。人のことを言えるのか? 貴様とて……」
「――これは……」
 カオルの声は無造作に切り取られた。
 その場に居合わせた者たちによってではない。今しがた、部屋に入ってきた男によってだ。
 全員が新たな登場者へ目を向けた。声音から確かめるべくもないことであったが。
「これは……一体……」
 ラグレクトやジェフェライトがそうであったように、男は目の前に広がった光景に我を忘れている。
 無理もなかろう。
 目に飛び込んでくる、静寂の柩《ひつぎ》の中で眠る“少女”たちは、彼がよく知る、彼が愛している相手そのものなのだから。
「……ハルカ……」
 キーファリーディングは呻くように恋人の名を漏らした。
 他のどんな言葉も思いつかなかったために。


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